地震の予知は可能か?
<地震を予知して被害を少なく?>
「地震の予知」といった場合、地震がいつ、どこで、どれくらいの規模で起こるかを地震が発生する前に公表して、周知しないと予知したということにはなりません。
大きな地震がどこで起こる可能性が高いかについては、過去の地震の記録や、活断層の調査で大体の見当をつけることができます。例えば、大きな被害を出した阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)についても、以前から六甲山地から淡路島にかけて活断層があることは専門家の間でも知られていました。そして、そこで大きな地震が発生する可能性を以前から指摘している専門家もいたようです。このように、長期的にみて大きな地震が発生する可能性のある場所を事前に指摘して、危険であるかどうかを判断するのが「長期的予知」です。全国の活断層の位置が調べられ、公表されています。これらの活断層は将来的に地震の発生する確率が高いので、対策が必要ですが、いつという時間のキーワードがこの「長期的予知」では、抜けています。
私たちが地震の予知について最も期待しているのは、「特定の場所で数年以内や数ヶ月以内にどこで地震が起きる可能性が高い」といった情報を与える「中期的予知」や「何日後や数時間後に地震が起こる」といった警報を出す、「短期的予知」でしょう。
現在までの調査研究の成果によって、大きな地震の前に地殻変動などの現象の事例がいくつか確認されています。例えば1994年の東南海地震の直前に東海地方の水準測量の観測結果に大きな変動があったとされており、次に同じ場所で起きる地震が同じような経過を踏んで発生する可能性はあるわけです。
東海地震予知の場合
東海地震は、駿河湾の海底断層(トラフ)を主要な震源域とする地震です。四半世紀以上も前の、1976年8月に「明日起こっても不思議でない!」なんて極度の切迫感がこもったコメントつきでその発生が予想されました。そしてこの年の10月には、早くも参議院の予算委員会で、その後衆議院の科学技術特別委員会で議論され、「東海地震説」はその科学的な根拠が出されたことにより、国が優先的に取り組む緊急課題として、急浮上しました。
発生すればマグネチュード8クラスといわれ東海地方に甚大な被害を及ぼす可能性のあるこの巨大地震の対策を目的とする「大規模地震対策特別措置法」という法律が1978年6月に公布、12月には施行されました。
この東海地震の防災対策を規定する「大震法」では、東海地震の前兆現象を科学的に把握して、予知できるということを前提にしています。前兆現象をとらえると、地震学者からなる「地震防災対策特別強化地域判定会」が緊急招集され、その場で東海地震が起きそうだと判断がされると、内閣総理大臣が閣議を開いて、警戒宣言(東海地震警報)を発令する仕組みになっています。
しかし、この東海地震の予知についてはプレスリップ現象が起こるか起こらないかによってその予知の根拠にしています。【プレスリップ現象とは、東海地震の想定海域では、海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に沈み込んでいます。海側のプレートに引きずり込まれるように、年間数センチ沈み込んでいる陸側のプレートが限界に達し、一気に戻ることで地震が発生するわけですが、プレスリップは、この限界が近づいてくると沈降がとまり、反発を始める時に歪となってとらえられる現象を言います。】
これらの地域に設置されているひずみ計の中で1ヶ所の機器でプレスリップ現象がとらえられれば「観測情報」、2箇所で「注意情報」、3箇所以上で観測された場合は「予知情報」が出されることになっています。
多くの地震学者や気象庁の地震の専門官も東海地震の直前予知が可能なのは、この現象がとらえられるかどうかにかかっているといわれています。つまり、仮にこの現象が起こったとしてもひずみ計がそこになければ、地震の予知はできないということなのです。そして、その現象が地震の前に必ず発生するかというと必ずしもそうだと言い切れない部分が、地震予知の可能性を低くしている原因といわれています。
なまずで地震予知?
今後、地震予知に可能性を与えるものとして研究されているのが、地震に関連した電磁気の異常現象や、生物の異常行動です。地震に先行して地磁気や電波の伝播に以上が生じるという研究は以前からもいろいろなされてきました。最近は、観測例が積み重ねられ、また、地震発生と関連してこれらの現象が発生するメカニズムに関する理論が洗練されてきたことから、今後、短期的な予知の方法としえ実際に適用可能になるという専門家もたくさんいらっしゃいます。
ネット上では地震情報サイトが立ち上げられ、関東地方の異常ノイズや地震雲、あるいは動物の異常などを報告して情報を積み上げて地震予知に生かそうというような試みも行われています。
ただし、電波や地磁気といった現象の観察には人工的な雑音が多いという問題もあり、また、理論的・実験的に予想される変動の大きさが非常に小さいことから、予知という実用にはまだまだ時間がかかるのではないでしょうか。