住宅火災による死者数(放火自殺者を除く)は近年、増加傾向で推移し、建物火災による死者数の9割程度を占めるまでになってしまいました。特に平成14年中の住宅火災による死者数は992人(対前年比プラス69人)、平成15年中の住宅火災の死者数は1,041人(対前年比プラス49人)と急増し、昭和61年(同死者数1,016人以降、17年ぶりに最悪の状況となってしまいました。 これらのことは建物火災よる死者が、火災による死者のほとんどを占めているのです。これらの住宅には法律によって消防用設備(自動火災報知機や消火器など)の設置義務がないため、設置されていない住宅がほとんどであり、火災が発生したときに、早期に発見し初期消火、あるいは避難行動に移れないことが死者が大部分を占める原因となっています。また、近年高齢化が進み、足腰の弱いお年寄りの死者が総死者数の過半数を超え、今後ますます高齢化の進展が進むと考えられ、高齢者の安全確保への対応が早急に求められています。
アメリカにおいても1970年代、住宅火災の死者は6,000人を超えていました。アメリカ政府は危機感を持ち、住宅火災による死者の減少を進めるキャンペーンを実施しました。これが住宅用火災警報器の設置を推進するキャンペーンだったのです。このキャンペーン開始時にはわずか数パーセントであった住宅用火災警報器の普及率は2000年には94パーセントになるに従い、6,000名を超えていた死者は3,420人まで減少しました。また、イギリスやカナダにおいてもアメリカの成功を参考にして、住宅用火災警報器の普及を推進していったところ、死者数の大幅な減少につながりました。アメリカをはじめとする諸外国の例をふまえ、住宅火災による死者の減少は、住宅用火災警報にの設置を促進することが最重要であると認識して、本来、個人住宅の防火責任はその個人にあるが、あえて法令による規制という踏み込みを行い、宅用火災警報器の義務設置という法改正を行ったものです。
新築する住宅は、平成18年6月1日から建てられる住宅が対象となります。(東京都は平成16年10月1日からすでに義務設置になっています。東京都のうち、東久留米市、稲城市および島しょを除きます。)
既に建っている住宅(既存住宅)は、平成18年6月1日から平成23年5月31日までの間に設置するよう猶予期間が設けられました。(この期間は市町村条例で定められますので、お住まいの市町村で違ってくるケースがあります。詳しくはお住まいの市町村の消防署で確認して下さい。)
住宅として使用されているものが全て対象となりますので、戸建ての専用住宅、店舗併用住宅の住宅部分、又、マンションやアパートなど共同住宅の住宅部分が対象となります。トレーラーハウスやモーターハウスも固定して住居として使用する場合は設置が必要です。ただし、共同住宅などで、既に住宅内に自動火災報知設備の感知器やスプリンクラー設備のヘッド(火災を感知して消火水を噴出する部品)が取り付けられている場合は、対象から除外されます。
【取り付けなければならない場所】
※注台所については市町村によっては条例で設置義務のないところもあります。お住まいの消防署で必ず確認して下さい。ただ、台所に警報器が全く必要ないかというと、そうではなく設置する方がより安全性が高まるので、設置するほうがよいでしょう。東京都の場合はすべての部屋、台所、階段に義務設置となっています。詳しくはお住まいを管轄する消防署で確認してください。
住宅用火災警報器は、火災により発生する煙や熱あるいは一酸化炭素などのガスを自動的に感知し、住宅内にいる人に対し、警報ブザーや音声により火災の発生をいち早く知らせ、避難をうながす器具です。火災を感知する部分と警報を発する部分が一体となっていて、住宅内の天井若しくは壁面に取り付けます。
※ 台所用として、火災とガス漏れを両方感知できる複合式のものもあります。
住宅用火災警報器は様々なメーカーから販売されています。安価を売り物にして販売しているメーカーもあるようです。機種の選択は個人の自由ですが、万一のときに確かな信頼性という面では「NSマーク」が付いたものをお勧めします。この「NSマーク」は日本消防検定協会の検定に合格したものに表示できるマークです。(法令に基づいて設置義務のある消防用設備(スプリンクラー設備や自動火災警報設備など)はこの検定に合格したものでなければ設置できません。)信頼性の証のNSマークです。輸入品の中にはアメリカ製に表示されている「UL」規格もお勧めできます。
就寝する部屋、階段には煙感知式火災警報器を設置し、台所には熱感知器を設置してください。